つくし会

田園調布「お受験の名門塾」が大事にすること

 

田園調布「お受験の名門塾」が大事にすること

知る人ぞ知る田園調布の「名門塾」。その個性的な指導方針とは?

 世の中には、特に大人が教えなくても熱心に勉強に取り組み、運動ができる子どもがいます。一方で、大人がどんなにしかっても宿題をしないし、鉄棒や跳び箱をなかなかできるようにならない子どももいます。


 さらに、大人でもなかなか仕事を覚えられない新入社員もいれば、自分で仕事を見つけてどんどん成長していく新入社員もいる。これらの違いは、どこから来るのでしょう。



■目標に向かって伸びていく卒業生たち

 筆者は田園調布で、「つくし会」という幼児教室を25年間運営してきました。つくし会は、受験のためのお勉強ばかりをしている塾ではありません。3歳から6歳まで1クラス6人という少人数制で、勉強だけでなく、運動や生活習慣までを広く教える教室です。毎回のように近くの公園に行ってランニングをしたり、時にはみんなで夕飯を食べたりして過ごします。

 このように勉強一辺倒ではないのですが、最難関といわれる慶應義塾幼稚舎、早稲田、学習院、聖心、青山学院など毎年合格者を出してきました。その志望校合格率は98%です。筆者としてうれしいのは、そのことだけではありません。その後成長して、社会人になった卒業生たちが、医師、アナウンサー、銀行員などそれぞれ望んだ仕事に就き、目標に向かって懸命に働いています。

 今でも多くの卒業生から連絡があり、ありがたいことに、つくし会での経験が現在に役立っていると言っていただくことがよくあります。

 つくし会で筆者が大事にしてきたことは、一言で言うなら、「すてきな大人になるための下地づくり」。はたからは少し厳しく見えるかもしれませんが、子どもをのびのびと過ごさせるだけでなく、ある程度、大人からの働きかけが必要ではないかと考えています。

 どうすれば子どもたちが、自分の力で道を切り開いていけるようになるか。今回の記事では、筆者がこれまでにやってきた取り組みの一部についてご紹介させていただければと思います。


教室にはいすがない

 つくし会の教室に入ると、そこには小学生が使う机が6脚並んでいます。いすはなく、机だけです。そして、黒板やホワイトボードもない。一目見ただけでは、ここが塾だとはわからないかもしれません。

 子どもたちは通常、週に2日ここに通い、5時間勉強します。5時間の内訳は、外に出て走ったり体操をして体を動かすのが2時間半、食事の時間が30分、机に向かっての勉強が2時間。まず普通の塾と違うのは、ほとんど休憩がないこと。そして子どもたちは立ったまま机に向かっているところでしょうか。

 入ったばかりの頃はしゃがみ込んだり、泣きわめいたり、つらくてじっとしていられない子どももいます。それでも、慣れてきたらどの子も2時間でも3時間でも立ちっぱなしで机に向かいます。子どもの集中力は、大人が思っている以上にすごいのですね。

 最近は筋力の低下により、まっすぐ立てない子どもが急増しているともいわれています。小学校の朝礼などでフラフラして真っすぐ立っていられないそうです。

 そして、しっかり立てない子はしっかり座れません。座っているときも猫背になり、足をブラブラさせたりして、姿勢が悪いのです。

 私自身、つくし会を始めた頃より、年々子どもたちの立つ力は衰えてきていると感じています。それでも、つくし会で週に4時間立ったまま勉強していると、しっかり足を踏みしめられるようになります。座って机に向かっていると筆圧が弱いのですが、立っているとしっかり床を踏みしめているからか、筆圧も強くなるのです。私は、自分の息子たちが家で勉強するときも、いすには座らせませんでした。

 つくし会を卒業するころには、長時間立ってもフラフラしている子はいません。体を動かしていることもあるでしょうが、年少でも3キロメートルぐらい平気で歩けるようになります。

 小学生になったらいすに座れるので、うれしくて授業中もじーっと座っているという話を聞きます。それは思わぬ副産物ですね。



■子どもはしかっていい

 つくし会のモットーは、「健全な競争」です。

 最近の幼稚園では、運動会で競走させないところもあるようですが、つくし会では、外で走っているときは競走させますし、図工でもきれいに塗れた子の絵を教室に飾っています。そして、「あの子の絵ははみ出さずにきれいに塗れているよね。あなたはどう塗りたいの?」と聞いたりします。そうすると、「僕もきれいに塗りたい」と子どもは思うのです。

 ただ、人に負けたくない気持ちより、自分なりの目標を持って頑張る気持ちを大事にしてほしいと考えています。負けたら負けたで、「今度頑張ろう」でいいのです。自分なりの目標を持てれば、どんどん上達していきます。


目上の人を敬うのは、子どもであっても当たり前のこと

 1回やってできなければ100回、100回やってできなければ100万回やればいいだけです。そうすれば、誰でもなんでもできます。

 そしてできたときは、「よく頑張ったね」と褒めれば、子どもにとって成功体験になります。むやみやたらに子どもを褒めても成長しませんし、怒ってばかりでも成長しません。

 つくし会を始めたとき、コンセプトは「自分の子に通わせたいと思う塾にしよう」でした。それは今でも変わりません。だから、塾に通ってくる子どもたちは、私の子どものように接しています。怒るときはすごく怒るし、喜ぶときは一緒に喜びます。

 たとえば、大人に「何歳?」と聞かれたら、「5歳」ではなく、「5歳です」と敬語で答えるべきでしょう。私はその場で「その答え方じゃダメでしょ」としかって、言い直してもらいます。

 ペーパーの問題を私が添削して、子どもに返すとき、黙って受け取ろうとする子どもには、「先生に直してもらったんだから、言わなきゃいけないことがあるんじゃないの?」と促します。「ありがとうございます」と言いながら、自分の足を見るぐらいに深くお辞儀をする。それができないと、ペーパーを渡しません。

 目上の人を敬うのは、子どもであっても当たり前のことです。普段は冗談を言って一緒に笑ったりしますが、上下関係はハッキリさせています。

 本当は、これは親が教えることだと思います。自分の子どもが、外で大人に向かって「5歳」と答えていたら、「大人には5歳ですと言わなきゃいけないの」と教えてあげる。それを繰り返していたら、子どもは自然と大人に対して敬語を使うようになります。

■「すてきな大人」に育てるために何十回でも繰り返す

 基本的なマナーを重視するつくし会では、「おはしの持ち方」もしっかりと指導するようにしています。

 正式な場でのはしの上げ下ろしは、意外にきちんとできる人は多くありません。「たかがおはしの持ち方で何が変わるんだ」と思うかもしれませんが、一流の世界の人たちは、会食の場でのマナーをきちんとチェックしているものです。小さなことかもしれませんが、おはしをきちんと使える子どもに育てるということは、恥をかかない大人にするということ。それも「すてきな大人」の条件です。

 つくし会では、合宿のときにみんなでお風呂に入り、食事もみんなで一緒に食べています。そのときの服の畳み方やおはしの使い方から、「いただきます」というあいさつまで指導しています。

 「もっと大きくなってから教えよう」「小さい子にそこまでしなくても」と否定的な親御さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、私の感覚では、5歳でも遅いぐらいです。3歳からおはしをきちんと持てないと、年齢が上になるほど、矯正に時間がかかります。「三つ子の魂百まで」ということわざは正しいのだと思います。


マナーは生きていくうえでとても重要なものだ

 はしの持ち方に限らず、マナーというのは生きていくうえでとても重要なものだと思います。単純に、外でご近所の方に会ったときに、「おはようございます」とハキハキあいさつできる子になったら、うれしくありませんか?  そういうことができている子どもは、公共の場で騒いだりしませんし、わがままも言いません。小さい頃からそうした基本を身に付けてもらうためのものが、幼児教育なのです。3歳から英会話教室に通わせている親御さんもいますが、私はそれよりももっと大事なことがあると思います。

 つくし会は受験対策用の塾と明確に打ち出しているわけではありませんが、小学校受験をするお子さんも多いです。学校側が見極めているのは生活習慣やマナーといった、基本的な部分です。ペーパーテストがいいかどうかよりも、テストで使った道具をきちんと片付けられるのか、面接の先生にきちんとごあいさつできるのかを見ています。そうした部分が生きていくうえで重要になることを、学校側も経験則からわかっているのです。

 それは3歳など小さい頃から繰り返し教えておかないと、急にその場でできるようにはなりません。だから私は、できるようになるまで何十回でも何百回でも教え続けます。

 子どもですから、3歩歩いたら忘れてしまう、それが普通です。だから、大人も子どもも大変かもしれないけれど、何回も言うしかないのです。

■小学校入学前までは貴重な時間

 最近は、子どもをきちんとしかれる親が少なくなったと聞きます。しかりすぎると自己肯定感を傷つけるということもよく言われます。けれども、親は親であり、友達ではないのです。自分のことは妥協してもいいけれども、子どもはこれから成長して世の中に出ていくのです。子どもがのちのち大変な思いをしないように、親がしっかり教えていったほうが、いずれは本人のためになると思うのです。

 家庭教育を十分にしないで、学校のせいにしていても仕方がないと思います。学校は勉強を学ぶための場であり、日常的なしつけは、本当は家庭でしっかりとするべきではないでしょうか。

 子どもはいつか親の手を離れますし、小学校に入ったら一緒に過ごす時間はだんだん減っていきます。幼稚園、保育園までがいちばん一緒にいられる時間なのです。

 小学校受験はつらいと思われがちですし、実際大変な面もあると思いますが、親子が一緒にいられる大切な時間に共通の目標に向かって取り組むという醍醐味もあるはずです。

 ですから、たとえ志望校に受からなくても、それは本当に大きな問題ではないのかもしれないとも思います。すてきな小中学生、すてきな高校生、すてきな大学生、そしてすてきな大人になっていく、その下地を作ることができれば、目先の合否がすべてではないと感じるのです。



東洋経済オンラインから転載 2017.5.18

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